就業規則の作成と届出の流れ

就業規則に関する手続きの流れ

就業規則は、次の手順で手続きを行います。

  1. 就業規則を書面により作成
  2. 労働者の過半数代表者から意見聴取
  3. 2の意見書を添付して所轄の労働基準監督署へ届出
  4. クリニックに掲示または備え付けるなどの方法により、スタッフへ周知

それぞれについて次に詳しく説明します。
ここは細かいので、専門家へ依頼される場合は読み飛ばしていただいても結構です。

1.就業規則の作成

「正職員用就業規則」「育児介護休業規程」など各規程の条文を作成します。

専門家に依頼する場合は、
クリニックの実情や要望などを初回ヒアリングで伝えると、
条文の案を出してくれることが多いでしょう。
専門家とクリニックの間で何度もやり取りし、修正を重ねながら規程をつくっていきます。

ご自身でつくる場合は、雛形などを参考にしながら、
自院の実情に合うようアレンジしていく場合が多いと思います。
くれぐれも、盲目的に雛形をそのままお使いになることはおやめください。
スタッフとのトラブルの火種になったり、
現行の法律に適合していなかったりする恐れがあります。

2.労働者の過半数代表者から意見聴取

条文が出来上がったら、次は過半数代表者からの意見聴取を行います。

就業規則作成の手続きとして、
労働者の過半数を代表する者から意見を聞かなければならないことが
法律で定められています(労働基準法90条1項)。
さらに届出の際、その意見書の添付が必要です(同2項)。
使用者がこの意見聴取義務に違反した場合には、
30万円以下の罰金に処せられます(労働基準法120条1項・90条1項)。

【過半数を代表する者とは】

ここでいう「過半数を代表する者」とは、次のいずれにも該当する者です。
・労働基準法41条2号に規定する管理監督者でないこと
・投票や挙手等の方法による手続によって選出された者であり、
使用者の意向に基づき選出された者ではないこと

経営中枢にいる役職者は立場上、使用者に近いため相応しくありません。
民主的な方法で選出されなければならないため、
院長先生が指名したり、親睦会の代表者などを自動就任させたりすることはできません。

スタッフの話し合いや持ち回り決議などで決定してもよいですが、
全スタッフが選出にあたることが必要で、
一部のスタッフだけで話し合って決めた人は過半数代表者になれません。また、立候補を募って信任決議を行うことは問題ありませんが、不信任の場合に「×」を記載させて、投票がない者については信任とみなすような方法も認められません。この場合は、信任の場合に「〇」を記載してもらう方法で決めるようにしましょう。

なお、立候補がないときに、
使用者側が特定のスタッフを推薦することは可能です。
推薦者を挙げる場合は、使用者による「指名」とならないよう、
必ず、ほかに立候補がないかをあらためて確認したうえで、
推薦された者の信任をスタッフ全体に諮るようにして下さい。

過半数の分母となる労働者数には、
常勤やパート勤務などの雇用形態にかかわらず、全てのスタッフが入ります。
クリニックで働く全ての労働者のうち過半数に支持された者が、過半数代表者となります。

【意見聴取とは】

意見聴取にあたっては、
十分に陳述する時間的余裕を与える必要はありますが、
その意見を実際に採用したり反映したりすることまでは求められていません。

「作成した就業規則に関して、労働者に意見を聴いた」という事実が重要なので、
たとえ就業規則の内容に反対されたとしても、
その反対意見を意見書に記載してもらえばよく、
過半数代表者の要望どおりに条文を変更する必要はないので安心して下さい。

なお、意見を述べることや署名すること自体を過半数代表者から拒まれてしまった場合は、
一定期間を設けて書面によりこれを求め、
それでもなお意見表明や署名等がなされないときは、
その旨を記載した書面を意見書の代わりとして労働基準監督署に提出することで足ります。

3.就業規則と意見書の届出

専門家に依頼する場合は、届出までやってくれる場合がほとんどでしょう。
ご自身で行う場合は、所轄の労働基準監督署の指示にしたがい届け出ます。

4.スタッフへの周知

労働基準法106条1項により、使用者は、
就業規則を常時作業場の見やすい場所へ掲示するか、または備え付けるなどして、
労働者に周知させなければならないとされています。
就業規則を新規に作成する場合だけでなく、変更する場合も同様です。

周知の方法については、
労働基準法施行規則52条の2により、次の方法が定められています。

・常時各作業場の見やすい場所へ掲示するか、又は備え付けること
・書面を労働者に交付すること
・磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、
各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること

最後に挙げられている方法は、
就業規則の内容を電子データにして、
パソコンなどで常時確認できるようにするというものです。
社内イントラネットに配信してURLを公開したり、
スタッフ全員にアクセス権限のある共有フォルダに格納したりして、
「知ろうと思えばいつでも」「全員が」「その内容を認識・理解し」
確認できる状態にあれば「周知されている」といえます。

iPadなどのタブレット機器に就業規則のPDFデータを入れて、
休憩室に置いておくというのもよいですね。


当事務所では、他院での実施事例をもとに各院に応じた制度設計をご提案し、
クリニックに適した就業規則の作成・届出から日々の運用に至るまで総合的にサポートしております。
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